「幸せになる努力をする前に、苦しみを減らすべきです」
ノーベル賞経済学者ダニエル・カーネマンが「幸福」をあきらめた理由

・内視鏡の検査中に感じる苦痛と、後で想起する精神的ショックの大きさには関連がない
・検査の終わりの苦痛で、想起したときの苦痛は決まっていた
・ポジティブな経験でも、最後の状態で想起する内容が決まる
 (全体として素晴らしい演奏でも最後の方でひどい演奏だと、ひどい演奏と記憶)
・人の経験の殆どは記憶されず、記憶になるのは経験の特定の部分のみ
 人はそれをつなぎ合わせて「物語」とする。
 そして人間が下す決定の大半は、そうした断片的記憶によって作られた物語にもとづいている
・記憶の中の幸福と、日々の幸福はかなり開きがある
・カーネマンの定義
 ・幸福:当事者がリアルタイムで感じている喜びの感情
 ・充実感、生活上の満足度:記憶の中で幸福とされているもの

生活上の満足度は、目標の達成や期待に応えるといった社会的な物差しや他者との比較にもとづくものだとカーネマンは説明する。

「お金を例に挙げましょう。生活上の満足度はお金を持っていれば持っているほど、それに正比例して上がります。これに対し、幸福感がお金の影響を受けるのはお金がないときだけ。貧しいときは苦しいものですが、いざ収入が最低限の必要を満たすと、私が幸福と定義する感覚は財とともに増大しなくなります」


・幸福は楽観主義的な傾向を生来持っているかどうかという遺伝的な要素に左右される部分が大きい
・幸福感に大きな影響を与える外部因子は『人間関係』、親しい友人や家族
・カーネマンにとって人生で最もみじめな時間は『ファスト&スロー』の執筆に取り組んでいたときだ。
 その理由は「たったひとりで4年間執筆に取り組んで、ひどく孤独だったから」だという。


・カーネマンはポジティブ心理学に対して懐疑的で、幸福の研究をやめた
・「人々は『幸福』を望んでいるのではなく、人生に対する『満足』を求めているのだということに気がついたのです」
・カーネマンによれば、我々は彼が定義する「幸福感」、つまりリアルタイムで起きる幸福の経験を求めてはいない
 人が求めるのは自分の人生の物語の「記憶」から見た充足感や満足度を経験すること


・カーネマンが考える確実に幸福になる方法:苦しみを減らすこと

「人間が幸福になるた

たとえば、イギリスでレイヤード教授が実践した幸福促進活動は、その大半が精神保健福祉のテ

確かに「幸福」の定義はいまだに曖昧だし、遺伝や環境に左右されるところが大きい。カーネンマンは私に、幸福についての取材を続けたいのなら苦しみのもとになっている要因を掘り下げることに軸足を置くとよいとアドバイスしてくれた。

そこで私は意識的に「経験」を集めるようになった。パリのカフェで3時間座り続けたり、ベルリンで特に観光もせずににひたすら歩き回ったり、定期収入の仕事も、自分の好きなこと——たとえば幸福や音楽について書くこと——のために捨てたりした。

・我々が最も大切にしなければいけないのは気の置けない仲間と共に過ごす時間だということ。この時間を気前よく楽しめば得をすることばかりだ。

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