元グーグル幹部激白 人を「スマホ中毒」に仕向けるグーグルが提唱する「マインドフルネス」は偽善だ│後編

・ハリスは、人の時間がデジタル機器によって乗っ取られる手法について調べてきた。
 それによって彼は、生活のなかでどの時間が「有効に使われているのか」にこだわるようになってきた。
・アプリのアイコンをチラッと見ただけで「誘惑と思考の丸ごと全部の引き金を引くことになる」。
 だからハリスはスマホのホーム画面の1ページ目には、Uberやグーグルマップのような、単独の機能しか持たないアプリしかおいていない。
 これらは、フェイスブックなどと違い、「底なしのボウル」によそうリスクが低いからだ。だからハリスのiPhoneは、ミニマリストのもののようだ。
 カラフルなアイコンや、Gmail、WhatsAppといった時間の浪費につながるアプリを、iPhoneのホーム画面の2ページ目のフォルダの中にしまい込んだ。
 M&M’sのお菓子を透明な容器から不透明な容器に移し替えるだけで、社員の間食を減らすことができたグーグルの実験にヒントを得たものだ。
・ハリスは自分のノートパソコンにポストイットを貼っている。「目的もなく開くな」
・「シリコンバレーは、ゆったりと鷹揚にかまえる場所ではないし、自分たちの行動が他者に与える影響にこだわっていられる場所じゃない。
 起業家たちは、より甘くてより美味しいものを作りたがる。ユーザーを引き込んで、何十億ドルもの評価額と何百万ドルの投資資金を正当化させるんだ」
・それぞれの企業が、最低でも、テクノロジーという名のジャンクフードに代わる健康的な代替案を作るべきだと考えているのだ。
・ハリスがいま恐れているのは、スナップチャットだ。
 ユーザーをとりこにするスナップチャットの戦略により、フェイスブックの戦略が古くさく見えるようになっているのではないか。
 フェイスブック・メッセンジャーは受信者がメッセージを読むと、送信者に自動的に「既読」を知らせる。
 このようにデザインされているのは、フォッグの理論によれば、社会的相互依存という我々の生来の感覚を活性化させるためだ。
 それによって受信者に応答を促すのだ。スナップチャットはより先鋭的になっている。
 初期設定を変えないかぎり、ユーザーは友人が自分に向けてメッセージを打ちはじめた瞬間、それを知る。
 これには、打ちはじめたメッセージを完成させないのは無礼であると思わせる効果がある。
 このアプリの「Snapstreak」という機能には、2人の友人が互いの写真を何日連続して送りあったかを表示する。
 そしてその誠実さに対する見返りが絵文字で与えられるのだ。
 これは、「説得的な戦略」というフォッグの理論そのものではないかとハリスは懸念している。
 ハーバード大学のエミリー・ウェインステインの調査によれば、この機能「Snapstreak」によって一部のティーンエイジャーは壊れはじめている。
 バカンスに出かける前、彼らは友人にパスワードなどのログイン情報を教え、自分の代わりに写真を撮るように頼んでいるというのだ。ハリスは言う。
・シリコンバレーが掲げる未来志向のイメージには、ほぼ間違いなく偽善の要素
・グーグルやフェイスブックは、従業員のためにマインドフルネスの訓練や瞑想のための空間を提供しこの運動におけるリーダー的企業として自らを位置づけている
・彼らは自分たちが「集中する」ための訓練を流行させている一方で、ユーザーに対しては集中力をそぐようにスマホのサービスやアプリを設計
 「もっと運動して健康になりなさい」と言いながら、食事のときには「ビッグマックとクォーターパウンダーのどちらが食べたいか」と聞くようなもの。

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